お爺さん司祭様はロルフさんとのお話が終わったからなのか、今度は僕に聞いてきたんだよ。
「ところでルディーン君。この他に、わしに話しておらぬ事はもうないかの?」
「お話してない事?」
でもね、僕、そう言われて困っちゃったんだ。
だっていろんなものを作ってきたもんだから、何を話してたのかなんて覚えてないんだもん。
だから腕を組んで頭をこてんって倒したんだけど、
「いきなり問われても思い出せぬか。ではヴァルトよ、おぬしが知っておる事でわしに黙っておる事はもう無いか?」
そしたらお爺さん司祭様は、もういっぺんロルフさんになんかない? って聞いたんだよね。
「そうじゃのぉ。あえて黙っておこうと思ったものは無かったはずじゃが……おお、そうじゃ。後はルディーン君が氷の魔石を作れることくらいかな」
「氷の魔石? ふむ。それならば村で作っておると聞いた事があるから知ってはおるが」
「おや? それを聞いて疑問には思わなかっとは、ラファエルも耄碌したのぉ」
ロルフさんがそう言って笑ったもんだから、僕、お爺さん司祭様がまた怒っちゃうんじゃないかなってちょっとドキドキしたんだよ。
でもね、お爺さん司祭様はちょっと考えた後に、
「なるほど。これは確かに、ちと呆けておったようだ」
そう言って笑いだしたもんだから、僕はびっくりしたんだ。
「司祭様、どうして起こんないで笑ったの?」
「ああそれはのぉ。本来ならばル氷の魔石を、まだ幼いルディーン君が作り出せるはずがない事に気が付いたからだよ」
お爺さん司祭様はね、ほんとだったら氷の魔石はもっとずっと長い間狩りとかをしてレベルが上がった人じゃないと作れないはずなんだよって教えてくれたんだ。
「もし無属性の魔石から氷の魔石を作り出そうとするならば、まずは氷系統の魔法を習得せねばならぬ。しかし、グランリルの村のもので、最もレベルが高いであろうルディーン君の父親やそのパーティーメンバーでさえもそのレベルの狩人にはまだなれておらぬはずなのだ」
「あっ、そう言えば前の氷の魔石が作れることを教えてあげたら、ロルフさんもおんなじ事言ってたっけ」
あの時は確か、アイス・スクリーンって魔法があるんだよって教えてあげたらそんな魔法知らないって言われちゃったんだよね。
あれ? でもこほお話、しちゃダメって言ってなかったっけ?
そう思った僕は、ロルフさんの方を見たんだよ。
そしたらロルフさんは、この際だから話しちゃおって。
「ラファエルならば話してしまっても別に構わぬじゃろう。じゃが、他のものには秘密にしておくのじゃぞ」
「他の人にはないしょにするの? でも、お姉さんたちも聞いてるよ?」
そう、ここにはお姉さんたちもいるんだ。
それにバーリマンさんはもう知ってるからいいけど、ローランドさんも確かステータスの魔法のページの事は知らないはずなんだよね。
だからここでお話してもいいの? って聞いてみたんだけど、そしたら大丈夫だよってロルフさんは笑うんだ。
「ジャンプの魔法同様、ルディーン君の秘密である以上この娘らが他に話す事はあるまい。犯罪奴隷になってしまうからのぉ。それにローランドはわしの執事じゃ。秘密を他のものに漏らすような事はあり得ぬよ」
「そっか。じゃあ教えてもいいんだね」
ロルフさんがそう言ったもんだから、僕は安心してステータスの事を教えてあげる事にしたんだ。
「あのね、僕、自分のステータスを見る事ができるんだよ」
「ほう、ステータスをな」
「うん。でね、その中には魔法のページってのがあって、僕が使えるようになった魔法はみんなそこに載っかるんだ」
「なんと、魔法がすべて載るというのか?」
お爺さん司祭様はね、僕のお話を聞いてすっごくびっくりしたみたい。
でね、それからちょっとの間考えこんじゃった後、何かに気が付いたみたいにうんうんって頷いたんだよね。
「どうしたの? 司祭様」
「うむ。前からなぜルディーン君が浄化魔法であるピュリファイを知っておるのかと疑問に思っておったが、これで謎が解けたわ」
そう言えばお爺さん司祭様、僕んちの水がめを見てびっくりしてたっけ。
普通はピュリファイって、お墓とか浄化する魔法だってみんな思ってるはずなのに、何でそれでお水をきれいにしようと思ったのって。
「なるほど、そのからくりを知ればルディーン君がピュリファイの事をお掃除の魔法だといったのもうなずける。そのページにはそう書いてあるのであろう?」
「うん。お掃除の魔法はね、その他にもクリーンとかウォッシュってのがあるんだけど、どっちもお水を綺麗にできないみたいだったから、ピュリファイの魔法でお水を綺麗にしたんだよ」
そんな僕のお話を、お爺さん司祭様はニコニコしながら聞いてたんだよ?
でもそんなお爺さん司祭様の肩をポンって叩いて、今度はロルフさんがなんか怖い笑顔でこう聞いたんだ。
「ラファエルよ。ちと聞きたいのじゃが、ピュリファイで水が浄化できるというのは本当かな? 初耳なのじゃが」
「はっ!」
そしたらね、それを聞いたお爺さん司祭様がすっごく慌て始めたんだ。
そう言えばお母さんが、お爺さん司祭様からこのお話は絶対にないしょにしてねって言ってたよって、家族みんなに話してたっけ。
って事はこのお話、ロルフさんにもしちゃダメだったんだね。
「皆の者、すまぬ。この話は聞かなかったことにしてはもらえぬか」
「その様子からすると、先ほどのはかなりの失言だったようじゃの」
「うむ。ピュリファイの秘密を知っておると神殿に知られたら、かなり厄介な事になるほどな」
お爺さん司祭様はね、これは神殿の中でも結構偉い人しか知らないお話なんだよって教えてくれたんだ。
「一般的にピュリファイと言う魔法は、高位の神官が墓場や戦争によって多くの者が亡くなった地の汚れを浄化する魔法である事は知っておるな?」
「うむ。この街の墓場でも、中央神殿から司祭以上の者たちが訪れて、大々的に浄化しておるからのぉ」
「うむ。あれはな、実を言うとこの魔法がそのような使い方をするものだと多くの者たちに認識させるための儀式みたいなものなのじゃよ」
ピュリファイって効果は一瞬で出るし、MPもそんなに使わないからから別に人がいっぱい居なくってもイーノックカウのお墓くらいだったら一人来て浄化で来ちゃうんだよね。
でもそれをみんなで来て周りにこれからやるよぉ〜って言ってから浄化するのは、この魔法がお墓を綺麗にする魔法なんだって覚えてもらうためなんだって。
「確かに、わしも先ほどラファエルの話を聞くまではそう認識しておったな」
「うむ。だがな、実を言うとこの魔法の効果は光の魔力によって浄化するというものなのだ」
「なるほど。神殿の収入源を知る者ならば、その効果を聞けば水の浄化にたどり着くのはたやすいであろうな」
お水を綺麗にする魔道具はいろんなとこで使われてるらしいんだけど、それは神殿でしか作ってないんだって。
でもみんな、その魔法は神殿の中でしか使われてない魔法だから、他では作れないんだろうなぁって思ってるそうなんだ。
それが実はみんなが知ってる魔法だったもんだから、ロルフさんもびっくりしてるみたい。
「この魔法は神官の中でも特に修業を積んだものでなければ使う事が出来ぬから、この事実が知られたとしてももしかするとそれほど支障は無いのかもしれぬ。だが実際に、それを教会以外で作ったものがおるからのぉ」
そう言って僕の方を見るお爺さん司祭様。
そっか、だからお母さんに魔法の水がめの事は内緒にしてねって言ったのか。
「このような事が起こらぬよう、神殿はこの事実を隠しておるのだ」
「ふむ。それならばうかつにこの事を知っておると知られれば」
「うむ。神殿から危険視されかねぬ」
二人して怖い顔しながら頷きあうロルフさんとお爺さん司祭様。
でね、その後ふたりはみんなの方を見て、
「ここまで聞いて皆も解ったであろう?」
「この話は他言無用じゃ。特にルディーン君が水の浄化をする魔道具が作れることは、決して他言するでないぞ」
怖いお顔のまんまでそう言ったんだ。
お爺さん司祭様、大失敗です。
流石にまずの浄化に関しては、元領主であるロルフさんどころか皇帝陛下やその側近でさえ知らない話なんですよね。
なのでこの話は実を言うと、鑑定解析の習得方法よりも広めたらまずい話だったりします。
でもまぁ、ここに居るメンバーだけだったら広がる心配は無いんですけどね。
もし広がったらルディーン君が困る事になるので、誰も話すはずが無いのですから。